ネクタイのお礼は夜明けのコーヒー

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それだけで、胸がほわんと温かくなった。 きっと、一夜を共にした好きな人とまだ少し気怠い朝に、一緒に飲むコーヒーだから美味しい。 この幸せを、言葉にして伝えられないのがもどかしい。 「課長」 「ん?」 「好き」 自分から、彼に唇を重ねる。 それしか、気持ちを伝える術がなかったから。 「僕も好きだよ」 今度は課長から、ちゅっと唇が触れる。 「でもさ、課長はないんじゃない? 昨晩はあんなに、一星(いつせい)、一星って呼んでくれたのに」 「わー、わー、言わないでください!」 熱くなった顔で、課長の口を塞ぐ。 言った、言ったけど! あれはなんていうか、気持ちが盛り上がっていたからっていうか。 「僕は普段でも、名前で呼んでほしい」 課長が私の顔を両手で挟み、じっと目を見てくる。 いたたまれなくて逸らしたら、そっちに顔が出現した。 「目を逸らしたらダメだろ」 「ううっ」 顔は笑っているのに目は笑っていない課長は、怖すぎる。 「い」 「い?」
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