ネクタイのお礼は夜明けのコーヒー

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僅かに課長の眉が寄り、急いでおちょこに口を付ける。 「いえ、全然」 「よかった。 ほら、もう一杯」 再びお銚子が差し出され、私もおちょこで受ける。 「こうやって、月橋とゆっくり酒を飲みたかったんだ」 やはり、課長の言っていることは私には理解できない。 こんな、地味で冴えない女と、酒が飲みたいだなんて。 まもなくして料理が出てきはじめる。 けれど、こういうところだと普通ある、刺身がなかった。 「ん? いつも飲み会のとき、絶対、月橋は刺身に箸を付けないから、苦手なのかと思って外してもらったけど、悪かったかな?」 「……いえ」 確かにそうだけれど、どうして彼がそんなこと、知っているんだろう。 「月橋はいつも、真面目だよな」 ある程度、酒も料理も進み、課長はすっかり足を崩していた。 「いまだって、そんなにいい姿勢でさ」 その反対に私は、いまだに正座のまま、姿勢もピンと伸ばしたままだ。 だからいつも、可愛くないなんて言われる。 きっと、彼もそういうことを言いたいのだろうと思ったけれど。
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