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「いいよなー、そういうの。
僕はすぐに、崩しちゃうから。
月橋のそういうところ、憧れる」
課長はすでに、酔っているんだろうか。
じゃないと、こんなこと。
「いつも、月橋のその、綺麗な姿勢を見ていると、ちゃんとしなくちゃな、って自然と僕も背筋が伸びるんだ」
「はぁ……」
そんなことを言われたのは初めてで、どう返していいのか困ってしまう。
「好きなんだ、その姿勢も――月橋も」
顔を上げると、二枚のレンズを挟んで課長と視線がぶつかった。
その奥からまっすぐに私を見つめる、艶やかなオニキスの瞳は、少しも揺るがない。
言葉なくしばらく見つめあったあと、先に視線を外したのは夜城課長の方だった。
「酔ってるな、僕は」
ふっ、と唇を緩ませ、そんなことを言う割におちょこを口に運ぶ。
急に酔いが回ったかのように身体が熱い。
課長が私を好き?
そんなこと、あるわけが。
「あの、夜城、課長?
いまのは冗談、ですよね?」
「月橋は冗談にしてほしいのか?」
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