ポンズ

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母親が父親の携帯に電話を入れる。 「どうした!花音に何かあったのか!」 父親が怒鳴るように電話に出た。 「違うの、花音が夢を見たんですって、 夢の中でポンズが「俺の代わりに生きろ」って 言い残して消えて行ったって言ってるの ちょっとポンズの様子を見て欲しいの」 「そうか、少し待てよ、今ポンズのところに 行くから」 父親が『ちぐら』の中を覗き込んだ。 「ポンズは寝ているぞ」 と言いながら手を『ちぐら』の中に入れて 猫を触る・・・・・猫は既に冷たくなっていた。 「ママ!ポンズが冷たくなってる!」 「えっ!何で!そんな...........」 母親は、娘になんと言おうか少し考えた。 精神的にも今は本当の事は言わない方がいいと 考えた母親は娘に、ポンズは元気でいる と伝えようと病室に戻った。 病室に戻った母親が目にしたものは......... 娘のベッドの上に座っている猫を見た。 「ママ、ポンズが私にさよなら言いに 来てくれた」 母親の目にも猫が見えていた。 「ポンズ!」 猫の名を呼びながら母親が近づく。 そばに行き猫の頭を撫でる、確かに此処にいるのはポンズだった。 そして、あの時のように「ニャ〜」と一声哭いて 消えて行った。 「ママ、ポンズが私に命をくれたの 『花音は、これから楽しい事、嬉しい事、幸せを まだまだ経験しなくてはいけない、 だから生きていけ!まだ命尽きるには早い、 俺は何百年も生きてきた、人は俺の事を化け猫と 呼んだ、しかし俺が幸せにした人間も沢山いる 欲に目が眩んだ人間や動物に優しく出来ない人間を懲らしめただけだ。 俺の今の家は花音の家だ、それと あの寝床、結構良かったぞ』 って言ってたわ、ポンズが私を助けてくれたのね ありがとうポンズ」 母親と娘は白々と明るくなってきた空を 窓越しに見上げていた。 『ちぐら』の中に横たわっていた猫が いつのまにか消えていた、と父親が 母親と娘に興奮しながら電話をしてきた。 病院の医者も娘の急な回復に驚いていた。 その後精密検査をしても異常なしという事で 奇跡のような退院をした。 そして、娘家族は数ヶ月後に保健所よりポンズに 似た茶トラを保護猫として向かい入れていた。 名を『あじぽん』と名付けていた。 『ポンズ』  終わり
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