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「ねえ、ママ?なんか猫の鳴き声が
聞こえない?」
「えっ?ママには何も聞こえないよ」
「ニャ〜」
「ほら、聞こえたでしょ?『ニャ〜』って
泣いてる」
「あら、ほんとだ!今聞こえたわね」
買い物帰りの親娘が周りをキョロキョロと
見回す。
「ニャ〜、ニャ〜」
「また泣いた」
「そうね、どこにいるのかな?」
女の子が急に草むらの中に入って行く。
「ママ!来て!!いたよ、猫がここにいた!」
母親が、娘の声がする方に近づくと
そこには、薄汚れた茶トラの猫が横たわって
いた。
「ママ、この子病気なのかな?病院に連れて行ってあげようよ!」
「そうね、このままにしておけないね」
母親がそう言って予備に持っていた布製の
マイバッグを取り出し、娘が付けていた
ポーチの中からタオルハンカチを取り出し
横たわる猫を包みマイバッグの中に猫を
そっと入れた。
商店街の外れに動物病院があったのを
思い出した母親が、
マイバッグを抱えて、来た道を少し引き返す
「花音ちゃん、ママのお洋服に捕まっててね
病院はすぐそこだから、離しちゃダメよ」
「うん、わかった」
幼い娘が母親の服に捕まり親娘で病院へと急ぐ。
病院に付き、事情を話して猫の診察を
お願いした。
待つ事30分ほど、先生が出てきて
「左後ろ足を骨折していたので、治療をしましたが、この猫ちゃんを、どうしますか?
お家の猫ちゃんではないのでしょ?」
「はい、道路脇の草むらの中で蹲って
いたんです」
「そうですか、それでは保健所に連絡して
引き取ってもらいましょうか」
「えっ?その後この子はどうなるんですか?」
「一応里親を探します」
「それで?もし里親が見つからない時は?」
「保健所にいるすべての子達が里親さんに
巡り合う訳ではないですからね、、、」
母親は医師の最後の言いかけた言葉がわかった。
医師も子供のいる前ではいえなかったのだろう
「ママ、この子うちで飼ってあげようよ、
私がせっかく見つけてあげたんだもの
それに怪我もしてるし、ねっ!お願い!」
「でもね、パパにも聞いてみないとね」
「パパには、花音からお願いするから
だからママからもパパにお願いして」
「そうね.........先生、今日のところは
この子を家に連れて行きます、それで
この子の治療代はおいくらになりますか?」
「その事でしたら、今日の治療代は
入りません、もしもこの子が花音ちゃんの
家の子になって、次に治療に来た時、その時は
治療代を頂きますから」
医者が親娘にそう言った。娘が神妙な顔をして
猫の頭を撫でている。
「そうですか、ありがとうございます、
この子の怪我が治るまで面倒を見たいと
思います、その間にこの子の事を決めますので
今日のところは先生に甘えさせていただきます」
母親がそう言って動物病院を後にした。
家に戻り、猫の様子を見ながら親娘で
夕飯の支度を始めた。
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