ポンズ

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しかし、その猫が気に入って棲みつく家は 今までに数件しかなかった。ほとんどの家が この猫によって滅ぼされていた。 昔のこの猫が気に入って棲みついた家の家族は 今のこの娘がいる家族と少し似ていた。 その家にも此処の娘と同じくらいの 子供がいて家族全員にこの猫は可愛がられた。 その時、娘の父親が猫のために『ちぐら』を 作ってくれたのだった。 猫は、その手作り『ちぐら』をとても気に入った それで、気を良くした猫はこの家に富を授ける 事にしたのだった。 天候が悪くどの村でも不作続きの時でもその家の田畑だけは毎年豊作続きで次第に家も潤い 娘も嫁に行く歳になった頃、100万石の大名の 跡取り息子の嫁になり娘の実家も 周りの村を一手に取り仕切る大名主になった。 役目を果たした猫は 人知れず当時の江戸に来ていた。 江戸に来た猫は、今までと同じように家に 棲みつき、気に入らない家を次々と 滅ぼして行った。しかし気に入った 家には莫大な富を授けていたのだった。 過去の事を走馬灯のように思い出していた猫に 「ポンズ!これがあなたの新しいお家よ! パパが買ってくれたの、いいでしょ〜! 早く入ってごらんなさい、きっと気にいるから」 娘が猫に言うと、足を引き摺りながら 『ちぐら』の入り口まで来た。 そして『ちぐら』のまわりを一周して また入り口のところに来て、中に入った。 「パパ!ポンズが入ったよ!『ちぐら』に入った 気に入ってくれたみたいよ!」 「ほんとだな、少し高かったけど 気に入ってくれたらそれでいい! よかったな花音」 「うん、パパありがとう」 娘家族も大喜びだった。 翌週、例の動物病院にポンズを連れて行った。 医師が診察すると、 「何と!もう骨が元に戻っていますよ! 何と言う治癒力でしょうか! 私も長年動物医師をしていますが、こんなに 早く治ったのは初めてです! でも良かったですね、これでポンズ君も普通の 生活を送れますよ」 医者も驚きながら喜んでいた。 この事を、一部始終母親がネットを通じて流した。すると 大きな反響でこの動物病院は毎日予約が殺到して 有名な動物病院になって行った。 その猫が、少女の家に来て数年が過ぎた。 ある年、父親が独立して仕事を始める、 1、2年はは苦しい経営が続いていたが、ある会社と取引が成立して、それからは業績が右肩上がりで良くなって行った。 母親の方も趣味で作っていたアクセサリーなどが SNSなどで評判になり、忙しい毎日を過ごしていた。 両親が、忙しく働いている中、娘が体調を崩して いたが、気丈な娘は両親に心配かけまいと 普通を装っていた。 その事は、猫も気づかづにいた。 娘が17歳になって半年が過ぎた頃、 娘の学校から母親に連絡が来た。 「花音さんが授業中に倒れまして救急で 病院に搬送されました」との連絡。
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