39、メアリー

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39、メアリー

翌日。  あおいは素早さUPキャンディと疲れのとれる薬草クレープ、アレックスの好きなチョコクレープなどを持って城に出かけた。  門の所には兵隊が立っている。  あおいは兵の一人に話しかけた。 「こんにちは、クレープ屋のあおいです」 「通行証はお持ちですか?」 「はい、こちらですよね」  あおいはそう言って、クレイグから貰ったばかりの通行証を兵に見せた。 「お通りください、あおい様」 「はい、ありがとう」  あおいは城に入ると執務室に向かった。  アレックスは誕生日プレゼントのお礼を書くのに忙しいと聞いていたからだ。  あおいは執務室のドアをノックして話しかけた。 「こんにちは、あおいです。アレックス様はいらっしゃいますか?」 「いません!」 「こら! 何を言うんですか、メアリー? 私はここに居ますよ。どうぞ」  あおいはおっかなびっくり扉を開けた。  部屋の中には可愛らしい、くるくるの巻髪をしたお人形さんのような女の子がいた。年齢は12才くらいだろうか? すこし大人びた表情であおいを見つめている。 「……年増」 「へ!?」  あおいは驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。 「メアリー、人のことをそんな風に言ってはいけませんよ。確かにあおいは年上ですが」 「あ、アレックス様まで酷い……というか、この子は誰なんですか?」  あおいはソファーの隅にお土産のバスケットを置くと、メアリーをじっと見た。 「名前を聞く前に名乗るのが礼儀ではありませんか? 年増」 「あ、また年増って言った! 酷い!! 私の名前は川崎あおいです。町でクレープ屋をやってます」 「ああ、泥棒猫でしたか」 「えええええ!?」  あおいはメアリーに悪意を持たれていることだけが分かった。 「メアリー、あおいに謝りなさい」  アレックスがため息交じりに言った。 「本当のことですわ。私はアレックス様の許嫁ですもの」 「え!?」  あおいはアレックスに疑いのまなざしを向けた。 「メアリー、それはおままごとの話でしょう?」  アレックスはあおいの視線を感じながらも、メアリーの頭を撫でながら優しく言った。 「いいえ、父上も了承して下さってます。正式な婚約者です」  そう言うと、メアリーは椅子に座っているアレックスの膝の上に乗った。 「お土産はアレックスと私で頂きます。もうお引き取り下さい」  メアリーはアレックスに抱きつきながら、右手であおいを追い払うような仕草をした。 「……アレックス様、このことはまたキチンとお話を聞かせて下さいね」  あおいはアレックスとメアリーにお辞儀をすると、部屋を出ようとした。 「年増、もう来ても無駄ですわよ」 「また年増って言った!?」  あおいは酷く傷つきながら、王宮を後にした。
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