833人が本棚に入れています
本棚に追加
62
響さんに対する曖昧だった気持ちが、ようやくわかって、僕はふわふわと浮かれていた。
自分の中で明らかに変化した気持ちに戸惑いは多少はあったが、好きな人と待ち合わせをし、映画を観に行く事が嬉しかった。
どことなくソワソワしながら、講義が終わり篠木と翔太と別れて、構内の待ち合わせ場所に行く。
2人は察していたようで早く行けと手を振ってくれた。
少し離れた特別講義棟の建物に入ろうとした時――――…
「あの、香坂 那智さんですか?」
突然声をかけられて、振り返るとそこに、小柄で大きな瞳が印象的な男の人が佇んでいた。
けれど、その瞳は暗く陰鬱だった。
「は い、あの、えっ と…?」
「響は止めた方がいいよ」
「……えっ…?」
意味ありげな言葉を僕に向け、
ニヤリと笑い言葉を続ける。
「自分だけが特別だと思ってる?そう思ってるなら残念。響は、ぼくとも何度もセックスしてる。だからアンタだけが特別じゃない」
「な に、言って…」
ドクンと胸がざわついた。
「それなのに、響に連絡しても素っ気ないし。会ってもくれなくなった!全部アンタのせいだ!アンタがいるから悪いんだ!響を返してよっ!」
混乱する僕に彼は一気に捲し立てた。
「何で響の家に住んでるんだよ!
響にどんな手を使ってあの家に入ったんだよ!
どうせ飽きられたら終わりなんだから、さっさと出て行けよっ!」
真っ赤な顔をしながら、凄い剣幕で捲し立て、僕に掴みかかろうと距離を詰めて来る。
避けようと思っても、その剣幕に恐怖して体が動かない。
掴まれて、殴られると思ったその瞬間――――…
「触るなっ!」
僕を掴もうと伸ばされた手を、バシッと叩き落とした。
「ぅあっ……!」
僕を庇うように響さんが割って入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!