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「田村!いい加減にしろよっ!」
響さんはその人を睨み付けた。
その人は払われた手をそのままに、血の気が引いたような顔で呆然と立ち竦んで、響さんを見ていた。
「お前とは付き合わないって何度も言っただろう?ずっとストーカーまがいな事ばかりされて迷惑だ。この子に絡むな」
その人は悔しそうに唇を噛みながら、涙を浮かべていた。
「だって、納得できない。ぼくの方が先に…、先に…、関係持ったのに…。好きになってくれると思っていたのに…。期待してたのに。家に1度も入れてくれなかったのに…、それなのにソイツがそんなに良いの?
ぼくがソイツより劣ってるって事?」
その人はポロポロと涙を流してた。
「おれ、最初に言っただろう?
恋愛抜きの関係じゃないとしないって。それでも良いって言ったのは田村だ。
先とか後とかの問題じゃないし、劣ってるとかじゃない。
おれはこの子が好きなんだ」
僕の肩をギュッと抱き寄せた。
「それに、この子がいなくても、田村とは付き合うつもりはない。
2度と近付くな。今後も俺たちに絡むようなら容赦しない」
冷たい眼差しと、抑揚のない冷たい声にゾクッとした。
多分、その人もだろう―――…。
顔色も悪く震えていたが、走って何処かへ行ってしまった。
「ごめんね?なっちゃんにイヤな思いをさせたね……」
「大丈夫です…。あの人は…、その…」
「引かれるかもしれないけど、前にセフレだったヤツなんだ。お互い割り切ってたと思っていたのに。…ごめん、なっちゃん」
シュンと項垂れる響さん。
「過去の話…ですよね…?」
「当たり前だよ、おれなっちゃん一筋だから」
慌てる響さんが可愛いと思って、思わず笑ってしまった。
この人は僕のもの
誰にも渡さない―――…
そう、思った。
だから―――…
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