68

1/1
前へ
/123ページ
次へ

68

彼女たちは1人は緩いパーマをかけたロングヘア、もう一人は、ショートヘアで2人ともキレイ系な感じ。 そんな2人を相手にして、しどろもどろだった。 「ほら、なっちゃん行くよ?」 響さんは女性との会話には、一切入って来なかった。平たく言えば無視していた。 「え、あっ、待って!私たちまだ会計してない!」 ロングヘアの女性は、響さんの腕を掴み、引き留める強者だった。 「…はぁ?」 響さんは、これ見よがしに眉間にシワを寄せて、ふぅっと大きな溜め息をついて、その掴んでる手を払い除け、女性2人に向き合った。 「…だから?…何?なんで おれたちがカラオケに一緒に行く事 前提で引き留めてるの?おれたちに関係ないだろ?カラオケになんか行かないし。あんたら2人で勝手に行けばいいだろう?それに、1ミリも興味がない相手と過ごすなんて、……拷問なの?」 「「…っ!」」 2人を真顔で見る響さんは、絶対零度という表現でいいのかな? あの、田村って人に向けてた有無を言わさずという圧力と迫力があった。 2人とも顔色悪く固まって撃沈してる。 響さんは隙をついたように振り向いて 「さ、行こうか?なっちゃん」 僕に向けられたのは、いつものキラキラした微笑みだった。 ギャップが凄い。 店の外でタクシーを拾い、自宅に着くまでの間、こっそり手を繋いでいた。 響さんは酔ったフリして僕の肩に頭を寄せてきた。 僕は幸せを噛み締めながら、響さんと繋いだ手を見ていた――…
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

832人が本棚に入れています
本棚に追加