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「ルーチェ様、いかがしますか?」
遅れて教会から出てきた青年が、神経質そうな声で少女へ問う。先ほど、老司祭へ質問を投げていた青年だ。彼も少女と似たような髪型や服装をしているので、まるで兄と妹のようだった。旅を始めたばかりの彼らの巡礼装束には、まだほとんど汚れがない。
ルーチェと呼ばれた少女は大人びた微笑みを顔に浮かべ、青年を見た。
「あれは見逃してやってもいいと思う。綺麗だったし、大事にしてそうだったし」
およそ少女らしくない偉そうな口調で言って、ルーチェは教会前の広場を歩き始める。青年は顔をしかめ、大股でルーチェを追った。
「僕はどうかと思います。偽物の聖遺物で巡礼者から銅貨を巻き上げるなんて」
「君は真面目だな、スクートムくん」
ルーチェとスクートムは教皇庁に派遣された調査員だ。巡礼者に扮して巡礼路を歩き、教会や修道院を秘密裏に視察して、目に余る行いがあればそれを正す。
「僕は枢機卿のご命令に忠実でありたいだけです。あなたと僕の使命は、聖職者の悪事を赦さないことです」
「ふふふ、君の親父もカタブツだったけど、君の頭もカッチカチだね」
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