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「心外です。僕は普通です」
ふたりは1週間ほど前に教皇庁を出発し、聖地を目指して旅をしている。まだ互いの人となりを把握し始めたばかりだ。
ルーチェは生真面目な相棒の顔を見上げ、細い肩をすくめた。
「スクートムくん、聖遺物は貴重な観光資源だ。真偽不明の聖遺物をすべて取り締まっていたら、どこの教会も破産してしまうよ。あの程度の小遣い稼ぎは黙認しても──あ、君、そろそろ、おなかがすいたんじゃない? 朝食を食べようよ」
賑やかな大通りへ進み、ふたりは巡礼者向けの食堂のドアをくぐった。カウンターで注文を済ませると、案内されたのは店の裏手のテラス席だった。テーブルは9割ほど埋まっている。
椅子に腰を下ろすなり、スクートムは己の主張を再開した。
「この村の人たちにとって、あの短剣が収入源だということは分かります。短剣がなければ、巡礼者はこの村を素通りするでしょう」
ルーチェとスクートムは周囲のテーブルへ視線を向けた。多くの巡礼者が晴れやかな表情で食事していて、貴重な聖遺物を目にした感動や興奮を同席の者たちと共有している。
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