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「……スクートムくん、君は本当っに真面目だね」
ルーチェは食べ損ねたクレムブリュレを頭の中から追い払い、辺りを見回した。先ほどの少年がまだどこかにいるのではないかと思ったのだ。
「どうかなさったんですか?」
スクートムが尋ねた時、ルーチェの頬に小石がぶつかった。
「あの短剣、偽物だって証拠あんの?」
細い路地から声がして、ルーチェはそちらへ目をやった。暗がりに先ほどの少年がひそみ、疑り深い様子でルーチェを睨んでいた。
ルーチェはスクートムを手招きした。
「あの子の兄さん、悪魔に憑かれてるんだって。司祭に助けを求めたのに、前金を持って来いって追い返されて、それであの短剣を盗んだらしい」
ルーチェの説明にスクートムは声を荒げた。
「こんな子供に金を要求するなんて! あの司祭、やはり放っておくわけにはいきませんね」
「うん。でも、まずは彼の兄さんを何とかしてあげよう」
ルーチェとスクートムは頷き合い、少年へ歩み寄った。
「君の兄さんが本当に悪魔に憑かれてるなら、私たちが助けるよ」
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