1.聖なる短剣

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1.聖なる短剣

薄暗い小さな教会の堂内を、たくさんの巡礼者が埋め尽くしている。 人々が食い入るように見つめているのは、一本の短剣。祭壇の前に立つ老司祭が両手で持ち、黄金と色とりどりの宝石がまばゆい古めかしい短剣だ。 「昔々、悪い竜が人々を苦しめていました。そこへ高潔で勇敢な少女コンフォアが現れ、神々の力の宿った短剣で竜を倒しました。国には平和が訪れ、やがて、時の教皇によりコンフォアは列聖(れっせい)されました」 老司祭は得意げな表情で語る。 「みなさん、もうお分かりでしょう。彼女が悪い竜を倒したその時に使っていた短剣。すべての悪を討ち滅ぼす聖女コンフォアの短剣。それがこの短剣なのです!」 老司祭が黄金の短剣を頭の上へ掲げると、巡礼者たちは床に両膝をつき、瞳を潤ませてそれを拝んだ。 「なんて美しい」 「まさか本物を見られるとは」 「ここまで歩いてきた甲斐があったわ!」 涙ぐんで有り難がる巡礼者たち。その中に、ひときわ冷めた目をした少女がいた。
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