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風間も息を切らし始めた。頭を撫でてくれていた手は、額にかかる黒髪を梳き、瞼に触れて、左目に残る傷をそっとなぞる。
適切な処置をしなかったために醜い痕として残ってしまったそこを、風間は慈しむような手付きで撫でてくれる。かり、と軽く掻かれると、痛いような痒いような、くすぐったい感覚があるけれど、それがまた気持ちよくて、もっと触れてほしいと思ってしまう。
「ん、ンぅ……っ」
はしたないと分かっていても、腰が勝手に揺れてしまう。浴室は音が反響しやすい。隠し事なんてできやしない。
口内を満たす雄が、もう一回り大きくなった。どろどろと溢れる先走りを舌に塗り付けて、自身の唾液と絡ませる。口いっぱいに風間の味が広がり、脳髄が蕩ける。体の芯が甘美な痺れに犯される。
「ふぁ、ン、んん……」
自分が今どんな顔をしているのか、客観的に見る余裕などない。ただ、鶫を見つめる風間の目は、情欲を孕んだ男の目だ。風間にそんな顔をさせているのは、鶫をおいて他にない。
今すぐ食らってしまいたい、とでもいうような獰猛な眼差しで鶫を見つめて、鶫だけをその瞳に映して、目の前の男は息を荒げている。かつてない充足感が込み上げた。
「っ、おい」
喉を開き、無理やり奥まで迎え入れた。喉を締めて亀頭を扱いてやれば、風間は焦ったような反応を見せる。
「ちょ、待てって……」
風間は鶫の髪をくしゃりと握りしめた。だからといって強引に引き剥がしたりはしない。鶫は一層深く肉の棒を銜え込んだ。息もできないほどに、深く深く。
「っ、おい、マジで……っ」
風間は苦しげに顔を顰めた。瞬間、鶫の喉奥で何かが弾けた。
「んン゛っ……!」
鶫は目を剥いた。雄の匂いが凝縮した濃厚な液体が、喉の奥深くに叩き付けられた。鼻腔も口腔も食道も気道も、全てが風間の味に支配されていた。
いや、味だとか匂いだとか、そんな生易しいものではない。熔けた金属そのもののような熱が、神経を直接刺激する。粘膜が焼け爛れるようだった。
たっぷり注がれた精液を、鶫は一滴も余すことなく飲み干した。舌にはまだ味が残っているし、喉にはまだ残滓が絡み付いている。胃の中には風間の熱を感じる。恍惚として、鶫は腹を摩った。
飲み干したことをアピールするために、鶫は口を大きく開けて舌を突き出した。風間は困ったような笑みを浮かべつつ、鶫を撫でて褒めてくれた。
「けど、出しちまったらもう一回できないぞ?」
「あっ……」
すっかり忘れていた。そもそもなぜ口で始めたかといえば、勃起させてもう一度挿れてもらうためであった。迂闊にも達してしまったそれは、だらりと下を向いている。
「もっかい……」
鶫が舌を伸ばそうとすると、風間は慌てて止めに入った。
「連続は無理だ。お前みたいな絶倫じゃねぇんだから」
「……」
「むっとすんなよ。代わりにオレがしてやる」
浴槽の縁に座らされ、期待に濡れそぼったものを銜えられた。風間の口は、見た目以上に柔らかくて温かい。肉厚の舌は滑らかに動いて、鶫の弱点を的確に突いてくる。
「っ……ヘンタイ」
「お前が言うか? 人のもん舐めて勃たせてるくせに」
「俺はいいんだよ」
「わがままだな」
しゃぶるのは慣れているが、しゃぶられるのは慣れていない。しかし鶫も男だ。性器を刺激されれば当然感じる。風間相手ならば尚更だ。思わず腰をくねらせると、風間は満足そうに微笑んだ。
「お前の善がってるとこ見てれば自然と勃つかもな」
「っ、やっぱヘンタイじゃねぇか」
「お前も大概スケベだろ」
「うっせ……」
火照った肌を汗が濡らす。鶫は湯気の滴る天井を見上げた。いよいよのぼせてしまいそうだった。
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