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天体観測
萌夫君とは何か縁のようなものがあるのか、中学、高校も同じだった。健太は、萌夫君はもっと頭のいい私立の学校に進学するとばかり考えていたが、同じ公立を選んだ。小学校3年から高校3年まで、9年間もの付き合いだ。時にはケンカをすることもあったけれど、すぐに仲直りした。
趣味も合い、高校では二人で天文部に所属した。
康太はアメリカで無事肝臓移植が成功して、今は免疫抑制剤を飲みながら普通に学校に通っている。もう声変わりも終盤だ。
ギスギスした家庭も、嫌な存在だった弟も無くなり、今ではごく普通の暖かい家庭を築いている。
何もかも萌夫君のおかげだ。小学3年生のころ、彼と出会わなければ、健太はヤケを起こして登校拒否になるか、不良グループに入るところだっただろう。
季節は高校3年の夏。
受験や就職のため、ほとんどの部員が引退する時期となった。
「健太、最後に俺と一緒に空を見ないか。それに俺、お前に言っておきたいことがあるんだ」
萌夫君は真剣な顔をして、健太に願い出た。
「俺で良ければ、何でもつき合うよ」
親友の頼みだ。断る選択肢はない。
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