パンをもらったお礼に

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「神様がくれたとか、そんなんじゃなくてね、ただ強く願ったらその力があることに気づいたんだ」 「な、なにそれ……意味わかんないよ……」  どう考えても危ないやつ確定だ。  最初からヤバかったけど。  本気で言っているとしてもヤバいし、冗談だとしてもこれ以上は付き合いきれない。 「私はね、ずっと誰かになりたかった。私じゃない誰かに」 「あたしをどうする気?」 「どうすると思うの?」 「だから、うざいってば! その喋り方!」  ただで殺されてやるもんか。  殺されるくらいなら――  身構える。 「なにもしないよ。意味がないからね」 「どうして? あんたはあたしになりたいんでしょ……だったら――」  エリカは薄い笑顔のまま答えた。 「だって――もうその力がないからね」
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