1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえサヤ、一回だけ他人に変身できるとしたら誰になりたい?」
休み時間。
エリカが私の背中をシャーペンの頭で突きながら訊いてきた。
「は? お金持ちかアイドルかそんなのじゃない?」
今日は食堂に行く予定だったので適当にこたえた。
エリカは嘲るように笑った。
「そんな有名人に変身したってダメだよ。あの映画みたいに入れ替わるわけじゃないんだから」
鬱陶しい。
早く食堂へ行きたいし、そんな妄想話なんか全然興味ないし、後付で設定を足してきたのもムカつくし、そもそもエリカのことがあまり好きではないし。
エリカとは同じ小学校だった。
同じクラスになったこともあった。
でもそれだけ。
特別仲良くもないけど悪くもない、そんな程度の仲。
小学校を卒業して私は私立の中高一貫校に進学して、エリカはそのまま地元の公立中学校へ進学してので会うことはなくなった。
入学式の日。
高校入学組の中にエリカの顔をみつけた私は、懐かしい顔に嬉しくなって声をかけたのだけど、エリカは私の顔も名前も忘れていた。
私はそのことを今でも根に持っていた。
最初のコメントを投稿しよう!