1人が本棚に入れています
本棚に追加
もう一度空を見上げるも、相変わらずにざあと勢いよく水を落としている。
どうしようかなあ。ちらと肩越しに振り返る。
ここはコンビニの前だ。ビニール傘を買って来ようか。
でも、結局そのあとにビニール傘を使うことはない気がする。
そうすると勿体ないよなあ。
「……けどなぁ」
今度は己の手を見下ろす。
手にしているレジ袋はひとつだ。
つまり、温めてもらったチーズドリアと同じレジ袋に、サラダと冷え冷えのカフェラテは同居している。
これはいけない。早く帰って別居していただかなければ。
空を睨む。が、雨足が弱まる気配はない。
だが、ビニール傘を買うのは何だか勿体ない。
ならば残された道はただ一つ。
幸いに家へはそれ程遠くはないし。
「突撃あるのみ」
ぐっと手を握った水無が、水が降り落ちる世界へ飛び出そうと足を一歩踏み出した時。
「――水無?」
ひとつの声が彼女をその場に留まらせた。
反射的に振り返る。
閉まるコンビニの自動ドアを背景に、こちらを見やる男子の姿に覚えがあった。
そう、彼は中学時代に意気投合した同級生。
最初のコメントを投稿しよう!