1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁー……、やっぱカフェヌクになってるしぃー……」
すっかり温まってしまったカフェラテに落胆した。
が、すぐに水無の瞳に気力が戻る。
「まだほんのりと冷たさが残ってるし……望みはある……」
「いや、それって普通はさ、『まだほんのりとぬくもりが残ってる』的な使い方じゃね?」
水無が桐谷の声に顔を上げれば、また彼が肩を揺らしながら、くつくつと喉奥で笑っていた。
――あ、またこの笑いだ……
何だか桐谷らしくていい。
「んー? どーかした?」
じいと桐谷を見上げていた水無は、はっと我に返って慌てて顔を逸した。
「な、なんでないしっ……!」
「ふーん……」
桐谷の声尻の調子が上がり、彼の瞳に愉しげな色が浮かぶ。
「……おもしろ」
ぽつりと言葉を落とす。
だが、水無の耳にその声が届いた様子はない。
それがまた愉しく、桐谷はまたもや肩を揺らして笑った。
ふふっと笑うそんな彼の声を聞き留め、水無が顔を上げた。
「なに」
と、不機嫌そうな顔で。
「いや、それであの百面相もどきだったんかと思ってさ」
最初のコメントを投稿しよう!