雨と傘とこいつ

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「あぁー……、やっぱカフェヌクになってるしぃー……」  すっかり温まってしまったカフェラテに落胆した。  が、すぐに水無の瞳に気力が戻る。 「まだほんのりと冷たさが残ってるし……望みはある……」 「いや、それって普通はさ、『まだほんのりとぬくもりが残ってる』的な使い方じゃね?」  水無が桐谷の声に顔を上げれば、また彼が肩を揺らしながら、くつくつと喉奥で笑っていた。  ――あ、またこの笑いだ……  何だか桐谷らしくていい。 「んー? どーかした?」  じいと桐谷を見上げていた水無は、はっと我に返って慌てて顔を逸した。 「な、なんでないしっ……!」 「ふーん……」  桐谷の声尻の調子が上がり、彼の瞳に愉しげな色が浮かぶ。 「……おもしろ」  ぽつりと言葉を落とす。  だが、水無の耳にその声が届いた様子はない。  それがまた愉しく、桐谷はまたもや肩を揺らして笑った。  ふふっと笑うそんな彼の声を聞き留め、水無が顔を上げた。 「なに」  と、不機嫌そうな顔で。 「いや、それであの百面相(ひゃくめんそー)もどきだったんかと思ってさ」
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