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「……まあ、そんなとこ――てか、どこからっつーか、いつから見てたんっ?!」
「んー、あそこから」
桐谷がくいっと背後を親指で指し示した。
それを水無が追うと、コンビニの中の雑誌コーナーが見えた。
壁がガラス張りになっているから、つまりは中から外が丸見えということだ。
「――っ!」
羞恥が駆け上がる。
頬に熱が灯った気がした。
「もお、帰るっ!」
勢いのままに身を翻し、未だ衰える気配のない雨の中へと水無は駆け出そうとした。
けれども、そんな彼女の肩を桐谷が掴む。
「ちょっと待ち、水無」
とんっ。体が跳ね上がった。
瞬間、水無の体が硬直する。
思わず振り返りざまにその手を振り払う。
が。
「おっと」
ひょいと桐谷が先に手を上げてかわされた。
それが何だか水無の気に障り、彼女の眉間にしわが刻まれた。
「――おもしろ」
ふふっと小さく鼻で桐谷が笑ったかと思えば、彼は水無に背を向けて。
「ちょっと待ってて」
と言い残して、コンビニの中へと戻って行ってしまった。
「……なんか、ムカつくんだけど」
水無の不機嫌そうな声は、ざあという雨音に呑まれていった。
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