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「ほれ」
コンビニからビニール傘を手に戻ってきた桐谷は水無を促す。
雨の中で、傘をさして。
それに対して彼女は。
「はあ?」
まるで意味がわからないとでもいうように、困惑と戸惑いが多分に含まれた声を上げた。
「だから、送ってくってこと。入れや」
「どこに」
「ここ」
ここ、と。桐谷が示したのは彼の隣。
つまり、こいつは相合傘をしろと言うのか。
のろのろと水無は桐谷を見上げ、目を瞬かせる。
だが、瞬いても見える光景は変わらなかった。
雨の中、傘をさす桐谷。という光景は。
「ん?」
視線を感じたのか、桐谷が不思議そうに首を傾げた。
けれども、水無はそんな彼の様子には気付かない。
そういえば、いつの間に自分は彼を見上げるようになったのか。
それは一体いつ頃から。
――てか、背が高くない……?
そんな当たり前のことに、今更ながら水無は気付く。
「んんっ。水無、入んねーの?」
と、そこへ咳払いが聞こえて。
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