雨と傘とこいつ

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   * 「ほれ」  コンビニからビニール傘を手に戻ってきた桐谷は水無を促す。  雨の中で、傘をさして。  それに対して彼女は。 「はあ?」  まるで意味がわからないとでもいうように、困惑と戸惑いが多分に含まれた声を上げた。 「だから、送ってくってこと。入れや」 「どこに」 「ここ」  ここ、と。桐谷が示したのは彼の隣。  つまり、こいつは相合傘をしろと言うのか。  のろのろと水無は桐谷を見上げ、目を瞬かせる。  だが、瞬いても見える光景は変わらなかった。  雨の中、傘をさす桐谷。という光景は。 「ん?」  視線を感じたのか、桐谷が不思議そうに首を傾げた。  けれども、水無はそんな彼の様子には気付かない。  そういえば、いつの間に自分は彼を見上げるようになったのか。  それは一体いつ頃から。  ――てか、背が高くない……?  そんな当たり前のことに、今更ながら水無は気付く。 「んんっ。水無、(はい)んねーの?」  と、そこへ咳払いが聞こえて。
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