雨と傘とこいつ

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雨と傘とこいつ

 コンビニから出てきた水無(みずなし)は、ざあという音を聞き留めて、弾かれたように空を振り仰いだ。  言葉が詰まって出て来ない。 「なんてこったパンナコッタ……」  そして出てきたのが、そんなしょうもないこと。  思わず呟くも、それはざあという雨音に呑まれて消える。  唖然とした面持ちでしばし彼女は空を仰いでいたが、やがて、はあと嘆息をひとつして項垂れた。 「……うちの手にあるのは、ほかほかに温めてもらったチーズドリアとサラダとカフェラテ――」  と、水無は自分が手にするレジ袋の口を広げ、その中身をしげしげと見下ろす。  が。 「……だけかぁー……」  この中に雨を凌げるスーパーアイテムはなかった。 「……おのれぇ」  低く呻く。まるで恨み言のようなそれで、ほんの数十分前の自分を呪った。  コンビニに昼食を買いに行こうと家を出る際に、どんよりと重たい雲を見上げていたのに。  それはもう、しっかりと。  なのに、なのにだ。  ――まあ、だいじょーぶっしょ  と気楽に考えて、財布と鍵だけ引っ掴んで飛び出してきた。  その結果がこれだ。
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