桜日side

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ガラッと病室のドアを引く音がした。看護師の河北さんが入ってきた。 「桜日ちゃん、おはよう」 「おはようございますー」 「毎日よく食べるわねぇ。たくさん食べたら病気なんて治っちゃうからね!」 「それいつまで言うんですかー、ご飯食べて元気になれたら苦労しませんって」 笑いながらそう言ったが、我ながら子供のくせになんでも分かっているみたいなこと言ったなと少し後悔する。 「何言ってんのよー。病院のご飯は栄養バッチリなんだから!これからもたくさん食べるのよー」 「はーい」 まるでお母さんとの会話だなっと思わずクスッと笑みがこぼれる。 両親は私の医療費を稼ぐためにずっと働きっぱなしで朝はやくこんな会話なんてしたことがなかった。こういう何気ない会話も私は好きだ。 「そういえば桜日ちゃん、今日検診じゃない?どこか遊びに行くんじゃないのよ?先生だってお忙しいんだから」 「分かってますって。ずっとここにいますから」 そう言うと、河北さんはお皿を小さな配膳者に乗せ、ドアに近づいた。 「頼むわよ」 私に笑いかけてドアを引いて出ていった。
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