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「うん!読む!」
おとかちゃんは床に置いていたナップサックからどさっとベッドの上に漫画を広げた。
僕は広げられた漫画の隣に置いてあるおとかちゃんのナップサックに目がいった。
『村田 桜日』
おとかちゃんの名前だろうか。僕は大きく書かれた名前らしき文字を指を指して言った。
「これ、おとかちゃんの名前?」
おとかちゃんは読んでいた漫画から視線をナップサックへと移した。
「そうだよ!桜の日って書いて、おとかって読むの!かっこいいでしょ?」
誇らしげに胸を張っておとかちゃんは言った。
「春の名前なんだね。僕も春に人って書くから、僕も春の名前なんだよ」
「へへっ、一緒だね!」
そうおとかちゃんは僕にまた笑いかけた。僕もおとかちゃんに笑いかける。
十年前、この病院の大きな桜でおかしな出会いをした女の子は僕の親友となった。
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