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「ねぇ、まだ桜咲いてないのになんでこの時期も毎日見上げるの?面白くなくない?」
そう春人を見上げて言った。すると春人は枝の先を指差して言った。
「ほら、あそこ。先が黄色でしょ?あと一ヶ月もしたら花が咲くんだよ。花が咲いていくところをこの目で見たいんだ」
春人が指を指したところを見ると確かに黄色と言われてみれば黄色になっている。
「それ、去年も言ってなかった?十年も毎年見てるんだから、もう良くない?寒いし」
「俺は桜日みたいに飽き性じゃないからね。毎年毎年花を咲かせるけど、桜全体の形は毎年違うから面白いんだよ。まあ、まだまだ子供の桜日には分かんないだろうけど」
そう鼻で笑いながらこちらを見下ろして言った。
「なっ…。私と春人は同じ年の四月生まれだし。私の方が生まれたの早いし」
口を尖らせてふて腐れるように言ってやった。
「まだまだ中身が子供だっていうことだよ」
春人はゴツゴツとした大きな手で私の頭をくしゃくしゃとかき回した。
「ほら、もうそろそろ朝食の時間だし。戻るぞ」
「へーい」
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