二度誘われたら、恥じらいながら…

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二度誘われたら、恥じらいながら…

 みなひゃん、こんばんは。伊勢嶋雪兎16歳、ホモです…。失礼、噛みまみた。何せ今ちょっと、緊張してるんですよ。え?何でそんな、緊張する事があるかって?やだなぁ、分かってるくせに。  つい先日知り合ったばかりのイケメンと一緒に、人生初のラブホに入ってそのまま泊まる流れになったからです…。  BLという名の聖典で腐るほど見てはいたけど、実際のラブホってこんな感じなんだぁ…。今後、自作の資料に使えるかもだからちょっとだけ撮影しとこう。プレイの内容にもよるんだろうけど、思ってたよりは普通の部屋って印象かな。ここら辺は「SMルームしか、残ってる部屋がありませんでした」みたいな展開じゃなくて、本当に良かったと思われる。突然の雹災で、俺たちみたく避難目的のために泊まってる人たちも多いだろうからね。  そうそう、雹災と言えば…。一ノ瀬くんには、先に風呂に入ってもらってますよ。何せ、俺を助けに来る途中でさんざん雹に打たれて身体中グショグショでしたから。  あの後は、彼(のお姉さん?)が言ってた通り一時的に雹の勢いが弱くなったんですけど…。ラブホへの移動の際、まだ使ってない方のコンビニ傘でずっと俺を守ってくれてたんですよね。しかも、鞄に入れていたブレザーを、優しく羽織らせてくれて。めちゃくちゃ紳士じゃん、彼…?色々とキツい事言って、悪い事したかなぁ。ブレザーから立ち上る匂いで、ちょっと彼シャツぽい妄想に胸をときめかせていたのは秘密。  極めつきに、俺の方から先に風呂に入るよう譲ってくれたけど…。流石に、そこまでの我儘は言えません。それに健康の見本みたいな彼だけど、何となく体調崩す時は一気っぽい気がして怖いしね。  差し当たっては、母さんに連絡をしておかないと。うぅ。生まれて初めての、お泊り報告かぁ。もっと、ロマンチックな状況でしたかったけれど…。  『雹が凄かったから、友達と泊まるよ。すぐ近所の、ホテルに…』  いや、これだとヤバいかな。何せ、その辺りの勘は鋭い人だから。とりあえず「友達」の文字は削って、ホテルも「ビジネスホテル」って事にしとこう。ビジネスマンも愛用してるだろうから、大きくは嘘をついてないはずだ。そう思ってLIMEを送信した瞬間、バスルームから声をかけられた。  「おーい雪兎、いい湯だぜ!久々に、一緒に入らねぇ?」  「入りませんよ!?ってか、久々も何も君と一緒に入った事なんてないからね!?」  全く、今の会話が母さんに聞こえでもしたらどうするんじゃい。こんな事もあろうかと、通話じゃなくてLIMEにしといて本当に良かった。何かしら、言い返してくるかと思ったけど…。諦めて、身体を洗う事にでも専念し始めたみたい。もし再度誘われたらって、ちょっとだけ心が揺らいだんだけどね。カツオが読んでた「新妻の心得」にも、「二度誘われたら、恥じらいながら…」って書いてたし。  さて、つまらない言い合いをしてる間に母さんからの返信が来てたみたいだぞ。  『まぁ♡雪兎ったら、うれしはずかし朝帰りね!頑張ってね。お母さん、応援しちゃう♡』  ぜーんぶ、バレてやがんの。ってか、何を応援してんだ。大丈夫かよ、この母親…。ちなみに、父さんと桜兄さんは病院の方で泊まるってさ。これは今日に限った訳でもなく、割としょっちゅうなんだけどね。  返信の返信をすべきか迷ってる間に、一ノ瀬くんがバスルームから出てきたぞ…って。  「ふ〜、いい湯だったぜ。雪兎も、風邪引かないうちに入れよな」  デカァァァァァァァい!説明不要!と、叫んでる場合じゃなくて…。  「キャアアア!す、素っ裸で出てこないでぇ!そ、備え付けのバスローブが置いてあったでしょ!」  「いやぁ、日本人だからかアレ着るの何かこっ恥ずかしくて。ってかそんなに目ぇ隠しても、指の間からガッツリ見てるのバレバレだぜ?」  「み、見てませんから!ってか君、オーストラリアに留学してたんでしょうが。そんな、スッポンポンでうろついてる方がよっぽど恥ずかしいわ!明日になれば、制服と下着が乾くから。ちゃんと、それ着て帰ってよねっ」  そう。ちゃっかり、洗濯機と乾燥機つきのラブホを抑えてたんですよね。そんなに数は多くないと思うけど、その辺りが本当に抜け目ないな彼。この点も、「お姉さん」からの思し召しなの?  って言うか、どえらいもん見た。ホモにとっては、眼福…。じゃなくて、目の毒だな。しかし肉体の方も、運動してるだけあってまこと見事なものでした。うぅ。最近忙しくて抜いてなかったので、ちょっとだけムラムラしてきちゃったぞ。  彼の言葉通り、お風呂自体は本当に「いいお湯」であった。本来、二人で入ることを想定したであろう設計だったけど…。その点については、深く語るまい。ボタンを押すと七色に光る照明を、彼と一緒に見たら良かったかなぁと頭の片隅で思う。  そうだ。俺、この後のために…。準備とか、しとく必要あるんだろうか?BLだと突然おっ始めたりするけど、あんなもんファンタジーかメルヘンですからね。で、でも準備万端だといかにも「期待してました」みたいで恥ずかしいなぁ…。  だけど雪兎くん、あなた先ほど目の当たりにしたでしょう?彼の股間にぶら下がっていた、一ノ瀬くんの一ノ瀬くん…。普段からあんなんだったら、大きくなったらどんなんなるの!?そ、そんなんを準備なしに入れようものなら…。  無理デース!死ニマース!    突然カタコト外人みたくなったけど、こちらにとっては死活問題だ。万一彼が欲望に駆られて襲いかかってこようものなら、腕力では太刀打ち出来ないからね。普段たまにお尻の方でヤッてるから、そう言う意味では慣れてなくもないんだけど…。念には念を入れて、いつもより多めに拡張しておこう。  そうだ。「拡張」で思い出したけと、ここってローションあるの?ラブホだから、コンドームくらいは枕元とかに置いてるんだろうけど。もし無ければ、潤滑剤なしにあの巨砲が体内へと…?そ…その時は、ボディソープか何かで代用しよう。彼も彼で用意周到だから、ワセリンくらいは常時してるでしょ。  よっしゃ。準備は整ったし、いつまでも日和っている俺ではない。男は度胸、何だってやってみるのさ。いざ鎌倉!…と、勢い込んでバスルームを出る。どうでもいいけど、日本人の身でこのバスローブを羽織るのって本当に気恥ずかしいよね。下着はまだ乾いてないから、今ノーパンの状態だし…。  「い、一ノ瀬くぅーん。俺も、お風呂上がったよ〜。って、寝とるんかーい!」  おっと俺とした事が、盛大にノリツッコミをしてしまった。言い忘れてましたが母親の出身が大阪なので、しょっちゅう関西方面には行っています。なので、興奮するとつい関西弁が出てしまう訳ですね。  さて、述べた通り一ノ瀬くんはベッドで爆睡してた訳ですが…。肩透かしを食らったと言うか、何と言うか。だけど、これについては仕方のない部分もあります。彼、午前で授業が終わった後は普通にサッカー部で練習していたでしょうから。雨で練習が中止になったかどうか、定かでありませんが…。その後は文字通り、身体を張って俺を助けに来てくれた訳ですから。  しょうがない。河岸のマグロみたいに、並んで寝るかぁ…。いやいや、別にちょっと期待してた訳じゃないですよ!ダブルサイズのベッドだから、DK二人でも入れるくらいの余裕はありますしね。ちなみに風営法の関係で、今はラブホに回転ベッドを置けないそうですよ。これ、何かの作品ですでに言った事があるような。  俺も俺で疲れてはいましたが、悶々としてなかなか寝つけない…。すぐ目の前に、黙っていればまぁ見れなくもないイケメンがいますからね。しかも狸寝入りって訳じゃないでしょうが、こっちに腕を回して思いっ切りホールドしてきやがった。お、俺は抱き枕じゃねぇぞ!軽々しく、抱きついてくるんじゃねぇや!  …まぁ、いいかな。今日は、本当にお世話になった事だし。時刻はそろそろ「明日」になりかかっているので、俺もいい加減に寝るとしよう。うぅ。暑苦しい上に、重いなぁ。  深夜になって、彼が涙を流している事に気がついた。今は俺が背を向けているから分かんないけど、どうも泣き声を堪えているみたい。やっぱり、狸寝入りをしている訳じゃ…ないよね?  何だろう。ただのシスコンの変態に飽き足らず、情緒不安定なのかな。この人。
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