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「止まれ!!!」
まだついていた首輪を何かにつかまれる。
ぐえっと息が詰まる。
人間だ。
やっと自由を手に入れたのに、また捕まる。
叩かれる……。
「まて、まて。えぇと、近所でこいつを知ってる人いないかな。あと、動物病院連れて行って……保健所はまずいか」
暴れるぼくを宥めつつ、ぼくの首輪を離さない彼は、頭を一生懸命に巡らせていた。慌ててきたのか、彼は裸足だ。
「悪いようにはしないから。な。」
彼はすぐ近くの家の玄関にぼくを招き入れた。地面に指をさして、
「おまえはお客だから、ここから先は上がってはいけない。いいな?」
と、告げた。
ぼくは、上目遣いでじっと目を合わせ、その場に伏せた。わかった、と言いたいのが、これで伝わるだろうか。
ぼくは玄関のくつ置き場。
彼は玄関の廊下側。
そこで家が区切られていた。
このラインをこえる日を迎えるには、この時はまだ、ぼくらは突然の出会いに戸惑っていた。
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