しえる亭 獅子丸

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 今日の空はあの日の空に似ていた。  晴れているのに、上空の風が強いのか、雲の流れが早い。影になったと思った十秒後に、雲が通り過ぎて気持ちのいい晴れになり、また陰る。  そんな中、ぼくは町中を一人で歩いていた。  首輪だけつけて、リードもつけずに。  車が行き交う音がきこえる。  初めて出た外に、ぼくは優雅に歩く。  抜け出してきた家からは、唐揚げのにおいがする。ぼくが逃げ出したことなど気づかずに。  バレないように、声もあげない。  ただ、ふとっちょだから、息はあがるけど。走れないけど。  できるだけ急いで家から離れようとしているけれど、周りからみたら、ゆっくり呑気に歩いているようにしかみえないかもしれない。  木の下をくぐり抜けると、毛むくじゃらで絡まった毛に、木の葉が絡みつく。  頭に何か触れるのはちょっと怖くて、ぼくは顔を顰める。 「黙れ!!!」  と、頭に飛んできた手のひらがフラッシュバックする。  ちょっと落ち込むが、もうこんなこともないんだ。そう、ぼくはもう野犬なのだ。  やっと自由だ!  憧れていた自由を手にしたぼくは、道路へ向かって走り出した。  信号が赤になった。
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