しえる亭 獅子丸

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 ぼくの名前はししまる。  皆からはしーちゃん、ししと呼ばれている。  ぼくの自己紹介に欠かせないのは、相棒である主人だ。  「散歩にいこう」と言ってぼくを喜ばせては、そのまま「ちょっと待て」とパソコンをして、何十分も待たされる。しまいにぼくがソワソワし始めると、「なんだ?」と言って約束を完全に忘れているような主人だ。そこに悪気は一切ない。  ぼくは散歩前にいつも伸びをする。前足、肩、全身のストレッチだ。主人はその時はわざと「何してるんやお前?」とニヤニヤしながら訊いてくる。  散歩に決まってるだろ、さっさと行くぞ!  散歩アピールに気づかないふりをして構う主人に、ぼくは玄関からリードを咥えてもってくる毎日だ。  やっと重い腰をあげた主人は、車にぼくをのせる。  もちろん、人間と同じシートに座る。荷台なんてとんでもない! ぼくだって家族だ。ものじゃない。
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