決断

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 十数年後…… 青年は普通のサラリーマンとなり妻と息子を儲け、家族三人幸せに暮らしていた。息子が十歳になった頃に、青年は新しい家族を迎えた。子犬である。 息子が青年と黒曜石が一緒に写るアルバムの写真を見て「犬を飼いたい!」と言い出したことで飼うことに決めたのだった。 「ほら、今日からこの子がお前の弟だ。名前をつけて上げなさい」 青年の胸に抱かれていたのは白柴の子犬だった。少年は子犬の頭を撫でながら名前を考えた。 白柴であるが、全身が白い毛で覆われていた。そんな白い毛の中に一際輝いて見えるは黒い瞳、黒曜石を思わせる黒い輝きを見た少年は直感で名前を決めるのであった。 「黒曜石! 今日からこいつは黒曜石だ!」 青年は驚いた。ネーミングセンスが自分と同じであったからである。そして、渋い顔を浮かべてしまった。 「ダメなの? この子の黒い目は黒曜石みたいで綺麗だよ!」 青年はそれから納得したように微笑んだ。 「お前はこの子に黒曜石のようにキラキラと輝けるように『(まじな)い』をかけたんだ。それよりも…… 何があってもちゃんと最後まで可愛がって上げなさい。お父さんからはそれだけだ」 青年はそう言いながら黒曜石を息子に手渡した。黒曜石は人懐っこい性格なのか、息子の顔をペロペロと舐め始めた。 「うん! わかった!」 青年は息子の心の底からの笑顔を見て、思わずえびす顔に顔が綻ぶのであった。                            おわり
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