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第100話 ヨシュアと話し合うアリエル
その後、アリエルとヨシュアは製鉄所を後にし、次の視察に向うのだった。
製鉄所の次は飲食店、鍛冶屋、役場施設などを視察する………。町の中が活性化し、移住者が増えて来たことにより、飲食店は忙しく人手不足で手が回らず、鍛冶屋は後継者不足、役場施設の方はアパルトメント、借家住宅の拡張、そして町全体にある公共施設が老朽化し、修復の予算を要望。
───そして………。
場所は中央広場、アリエルとヨシュアはベンチに腰掛ける。
「とりあえず、こんな感じかな………」
アリエルは数枚の書類をバサッと広げ、内容を確認する。
「勉強になります」と、ヨシュア。
「他の地域はもっと違うと思うけど、私はこうして視察をしているね………」
アリエルは少し自信無さげに言う。しかしヨシュアは主張する。
「でも、領主が町の中を視察し、人々の声に耳を傾けるのは大切な事だと思います」
「帝都に方は違うのかしら?」
アリエルは尋ねる。
「はい、帝都では視察なんて無いに等しいです。みんなが知らないうちに税金が上がって、市民は怒っています」
「やっぱり帝都議会では平民の声は耳を傾けない性質が高いのね………」
「でも、父上は違います。平民の人達が住みやすい町にしようと日々、頑張っています。けど、貴族の人達がなかなか分かってもらえず、いつも会議ではイザコザになるって」
アリエルは言う。
「帝国は昔から貴族が平民を従え、伝統や文化などを栄えてきたから、やっぱり難しいわね」
ヨシュアは尋ねる。
「どうして?。議会って暮らしている人が困っていたら助けてあげるのが仕事なのに、何で大勢の大人達はケンカしなくちゃいけないの?伝統や文化を維持するのに、パンを食べられない人を作るほど、大事なの?」
ヨシュアの難しい質問に、アリエルは腕を組み、眉間にシワを寄せてう~んと唸り、答えを探し出す。
「それは………うまくいえないけど、伝統や文化を維持してこその帝国、これが貴族派の考えである。君の父上の革新的な思想はかえって、帝国の伝統を破壊してしまうから、それを恐れているのではないかな?」
アリエルの言葉に、ヨシュアは。
「父上の考えが帝国を破壊するなんて、ただ、人を助けるだけでそんな事になるんですか?」
「大人の世界には、色々とあるのよ。今度、君の父上に聞いてみたらいいよ………少なくとも、私は市民の事を考えて働いているつもりよ、毎日が手探りだけど………」
アリエルは言う。
ヨシュアは思った、アリエルさんのような人が帝国を導いていけば、みんな幸せなになれるのに。
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