第11話 べりある

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第11話 べりある

 部屋全体に広がる閃光のような光は晴れ、視界が少しづつ戻りつつある。そしてアリエルは息を吐き出し、気持ちを整える。  状況が状況。まず、国家機密のである魔王ベリアルが復活。原因は自身が封印の間に立ち寄った事により、憑依されたから。そして自身の前世を知り、女神アルティナの力を借り、何とか魔王ベリアルを打ち勝つ事が出来た。 「まったく、ツッコミ所があり過ぎて気持ちの整理が付かないっての………」  魔王ベリアルの出現、自身の前世。不可解な事が多く、アリエルの額から汗が流れる。そして息を吐き出してから拭く。  久々に実家に帰って来たら、何でこんな目に遭わないといけないのだろう?。と、心の中で愚痴を唱えるが、無事に解決出来たので良しとしよう。これからやることが山積み、故郷の領地をどうやって建て直していこうか。それらを考えなくてはならない。 ────さてと………。  とりあえずひと息を整え、机に腰掛けるアリエル。書類を広げ、これからの未来を考える。納税、領民、行政、公共事業や法整備等の書類に目を通す。 「のらっ」 「何かしら?」と、アリエルは声の方向に視線を向ける。  元に戻る部屋。窓から差す日の光に照らされ、そこにいるのは女の子。容姿は10歳前後の幼女。髪はピンク髪ショート、紅い瞳に狼のような八重歯がキラリ。衣装は袖無しの白シャツに黒いスカート。深紅の革靴。そして頭には2本の角が生えている。 「女の子?いつからそこに?」  アリエルはビックリ。 ───そして考える。1分………後。 「まっ………まさか」  私の中に嫌な予感が、風船のように膨れ上がる。  女の子の正体、それは………。 「私の名前、べりある。のら」 ───やっぱり。さっき封印した魔王であり、奴隷にされ掛けた。そして帝国を滅亡まで追い詰めた国家機密。 「ヒャアアアアアアアアッ!!」  名前を聞いて、私は情けない声を張り上げ、クローゼットの所まで跳び下がる。 「のら?」  べりあるは、クローゼットまで追い詰められ、びくびくしている私を無垢に見つめる。 ───てくてく。  べりあるはアリエルに歩み掛ける。 (ヤバい。私、今度こそダメだ………)  私は、覚悟を決めて瞳を閉じる。 ────ぎゅっ………。 「えっ?………」  私の全身に何か温かい感触が行き渡る。何かこう、優しく包まれているような。私はオドオドした気持ちで、瞳を開かせる。   「私、べりある。アナタのおなまえは?」  べりあるはアリエルに抱きついていた。頬を赤くして、まるで仔猫のようなつぶらな瞳を輝かせ、尋ねる。    どうやら、私は魔王を隷属させてしまったようです、
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