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第2話 揺られる馬車の中
(ふぅ…………)
私はアリエル・ヨハーソン。帝国皇族の元婚約者、今は婚約破棄されたただの女性だ。これまで、色々とあったのでタメ息しかでない。
街道を進み、ガタガタと揺られる馬車の中、私は窓から景色を眺めていた。視界に広がる緑が生い茂る高原。街道の左側には森林が広がり、川が流れる音、小鳥の鳴き声が響き渡る。
───方角は北、ルシアン領の故郷に向かうのである。
私は思い浮かべる。そう、私は元からこの世界の人間ではない。私は、前世では派遣社員の事務員だ。
私の名前は山村真美(やまむらまみ)。ごく普通の派遣社員の女性だ。年齢は23歳、実家暮らし、派遣社員になったのは少し色々あったから。
「ハァ………………」
私は仕事を終えた帰り、いつものように家に帰って風呂に入ってご飯を食べて、歯を磨いてそんでテレビを見て寝る。朝起きて、朝飯を食べて、歯を磨いて、仕事に行って、仕事をして終えたら帰って来て、そんな毎日だった。同級生は皆、結婚して自分は独身だ。こんな人生だから、色の話はない。
★★★★★★
漆黒の空間にいた。状況は不明、記憶もなく、自分が何者なのか分からない。ただ、一言で表すと一片の光もない(無)の空間である。
───そして、光が差し込む。その光は徐々に大きく広がり、漆黒の空間を侵食する。
おめでとうございます、元気な女の子ですっ。
目の間、私は白の白衣を着た女性に抱きかかえられた。その横には金色の女性、女性は額から汗を滴らせ、息を荒くして疲れた様子である。
それから、私が赤ん坊になったのを実感したのは少しした後だった。いつものように就寝したら赤ん坊になり、出産したらしい。ルシアン領の領主貴族の一人娘として転生し、新たな世界にて、新たな両親と共に人生が始まるのである。
生後、数ヶ月したら。
「おいで、アリエル………」
───私は緑のカーペットが広がる部屋にてハイハイをしていた。目標は私を待ち構えている母上の下。何だろうか、赤ん坊の私が現世での記憶を持っているので少し気持ち悪い………。赤ん坊の状態なので身体は出来ていないので、ハイハイの運動はキツイ。
そして私は母上に近づき、抱き抱えられる。
「はいよい子、よい子………」
頭を撫でられる私。見た目は赤ちゃん、中身は大人なんて言えない………。どっかの探偵マンガの主人公よりキツイ。
「キャキャキャ………」
私は誤魔化すように、無垢な声で笑う。何故なら恥ずかしいから。
「フフ、アナタは良く笑う子ね」
母上は言う。
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