第3話 大騒ぎになる帝都

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第3話 大騒ぎになる帝都

 その頃、帝都では。 「大変な事になったぞっ!!」 「封印の書物が無くなるなんて、誰がこんな事をっ!!」  兵士達は大パニックに陥っていた。場所は皇居であるクレイヴ宮殿にある封印の間。その奥に安置された玉座にて、魔力で精製した鎖で固定されるように封印された例の書物が無くなっていた。例の書物には(ある者)が封印されていた。その(ある者)は名前を出す事すら恐怖し、1000年前の帝国全土を震撼させた。 「陛下に報告だっ」と、近衛兵は走る。  帝国は大騒動となっていた。しかし最大級の国家機密でり帝国全土に広まる訳にはいかない。 ───皇帝の間にて。 「なんて………事だ」  玉座に腰掛けれジェームス・アルゼイド皇帝は事態を把握し、深刻な表情で頭を抱える。高貴な雰囲気を漂わせた金色の長髪、真っ直ぐな瞳に容姿は中年の40代といっておこう。 「アナタ………」  王妃のナタリアが心配な様子で皇帝に寄り添い、伺う。そして、ジェームス皇帝は立ち上がり、命令を与える。 「………緊急事態宣言だ。何としても封印の書物を見つけよっ!!でなければ、この帝国が滅んでしまうっ!!」  皇帝は兵士達にビシッと命令する。青空が広がる日差し、鉄橋から帝都を駆け抜ける騎兵隊。そして帝国の兵士達は宮殿から一斉に出兵し、東西南北の国内にて大捜索を実施する。皇帝陛下の命令は絶対であり、書物の奪還が絶対条件である。  ★★★★★★ ────そして。  私、現の名前のアリエルは、馬車の中でスゥースゥーと鼻息を吐き、うたた寝をしていた。過ごしてきた過去の思い出に浸り………。かれこれ、帝都から北のルシアン領までは片道3時間が経過している。 「お客様、ルシアン領です。そして、フェリの町まですぐです」  馬車の運転手は言う。 「うーん………」  座席に身を預けていたアリエルは運転手の言葉で目を覚ます。馬車の踏み鳴らす蹄の音が、耳元で心地よく鳴り響くのである。  ★★★★★★ ───フェリの町。それは帝都から北に位置する山々に囲まれた町だ。 「ご乗車、ありがとうございます」と、馬車の運転手に。 「ありがとうございます」  私は馬車の運転手に、銅貨3枚を手渡すのである。そして馬車はパカパカと蹄を踏み鳴らし、馬車乗り場に向かい、馬を休ませるのである。  私は辺りを眺める。懐かしい故郷の町に、心が落ち着く自分がいる。石作りの地面、白塗り外装に瓦屋根の建造物が並び、微風が辺りに吹き付ける。 「ただいま、私のふるさと」  左手を上げ、吹き付ける風に乱れる髪を整える。私はカバンを片手で持ち上げ、歩く。
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