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第4話 帰郷
私は町のメインストリートを歩いていた。石造りの地面を歩き進む足音がコツコツと響かせ、故郷に帰って来たと実感させる。
───真新しいとは言えないが、白塗りに外壁塗装された建造物や街頭が並び、ポツポツと通行人と行き交う。
「あら、アリエルちゃん。久しぶり」
通行人のおばさんが親切に会釈する。
「マリーおばさん、お久しぶりです」
アリエルは挨拶。
「故郷に里帰りかい?」
「いや、ちょっと訳がありまして………」
アリエルはポリポリと頭を掻き、正直に説明する。細かい理由は機密情報かつ、国の内政事情は知られたら抹殺レベルなので話せないが、ハッキリと婚約破棄と説明するのである。
「まぁ、婚約破棄されたの?。皇族って色々あるのね………」
マリーおばさんは言う。そんな他愛のない会話をする2人。
そしてアリエルは残念な表情を浮かべ、キョロキョロと町中の風景を眺め………。
「何か淋しくなりましたね………」
アリエルの言葉に、マリーおばさんも口を開く。
「ええ、最近は町の過疎化が進んでしまってね。昔は鉱山採掘や農業、観光などで活気があったけど、今はこんな状況さ………」
と、答える。眺めていたらメインストリートなのに人気が少ないのが気になる。いるのは老人や女性の領民。建物の多くはシャッターが閉まり、あるのは食材屋と服屋。あとは冒険者ギルドの事務所など。文字通り、過疎化が進んでおり、地面に落ち葉と枯れ枝が巻き付いた空風がカラカラと転がる。
町の過疎化が進んだのは、アリエルが皇族に嫁に向かう数年前からであり、それは少なからず知っていた。昔はこの町炭鉱で栄えた町であり、しかし多くの原因は鉱山採掘による鉱石が採れない為、人々が次々と離れて行ったからだ。するとアリエルはハッと少し思い出して口を開く。
「そういえば、明日は50回目の感謝祭でしたね?」
確か、感謝祭はこの町の名物行事。栄えていた時は国内から多くの観光客が訪れた。祭りでは様々な催し物が出店し、中央広場で開催される音楽オーケストラは圧巻だ。
「感謝祭………ね。そうだね」
感謝祭。という台詞にマリーおばさんは何処かガッカリしたようにため息を吐く。そして去り際に、「今の感謝祭を見たらアナタは後悔するわよ」と、マリーおばさんは立ち去り、帰路につく。
───そういえば、感謝祭の準備は1週間前から行われるハズだけど、準備をしている人々が見当たらない。街頭などに祭りの装飾である領旗や造花が飾られ、道際には露店準備をしてい人々がいるのだが、まるで忘れられているようにいない。
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