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第5話 帰宅するアリエル
────そして、この町。いや、ルシアン領全土を運営する領主ヨハーソン家の屋敷に足を運ぶ。屋敷はアリエルの家であり、3階建ての豪邸である。辺りに映るのは季節の花が咲き誇る庭園、レンガ造りの地面をコツコツと踏み鳴らし、造園作業者のボブおじさんに「ただいま」と、挨拶して屋敷に向かう。
────ガチャと、大きな扉を開くアリエル。
「あら………」
中央ホールは3階建ての手すり付きの木製階段が築かれ、幾つもの部屋。階段と床には緑のカーペットが敷かれ、そして天井には宝飾のようなシャンデリアが吊るされ、キラキラと輝いている。そして、階段の手すりに掴まり、そこにいたのは母のルナ・ヨハーソン。栗色のロングヘアーの40代の白のドレス衣装の婦人だ。無駄にスタイルは良く、容姿は30代の若い女性だ。
「ただいま、母さん」
アリエルはポリポリと頬を掻いて言う。
アリエルの照れ臭いセリフに、ルナ婦人は落ち着いた姿勢で階段を降り、駆け付ける。
「お帰りなさい、アリエル。皇族の次男様と上手くいってる?」
ルナは尋ねる。そう、アリエルが帰って来たのは一時的な帰郷だと思っている。
「母さん、その事なんだけど………」
アリエルはルナに例の理由を説明する。
「そう、婚約破棄ね………」
ルナは何処か納得したような様子。
「その………ごめん。帰って来てしまって」
アリエルは申し訳ない表情で。何故なら偶然、この町に訪れていた皇族次男のケビン・アルゼイドに婚約され、意気揚々と皇族に嫁いだから。帰って来ないつもりだった。しかし、ケビンに婚約され、受けたのは好きだからではない。皇族からの命令と捉えたから、何度も言うが、このエストラーダ帝国では、皇族や皇帝のどんな命令、言うことは絶対である。もし、命令を無視すれば罪に問われしまい、地獄のような監獄に収監される。
ルナはクスリと微笑み。
「何で謝るの?ここはアナタの家よ。子供が家に帰って来るのに、謝る必要ある?それに私は、アナタが帰って来てくれて嬉しいのよ」
ルナはアリエルの左手を取り、包み込むように握る。
「お母さん………」と、左手を取られたアリエルは感極まり、鼻をすする。左手を包み込まれた温もり、それは母性愛だ。
「お父さんが、書斎室で待ってるわ。早く顔を見せてあげなさい………」
と、ルナは言う。何故なら父親が一番、アリエルを心配していたらしい。
「分かったわ」
アリエルはルナの横を通り、階段を掛け登り、父親のいる書斎室を向かう。早く駆け付けて父親を安心させたい。
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