第8話 封印された扉

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第8話 封印された扉

───妾の奴隷になるがよいっ!!  封印させた書物の魔王は詠唱し、赤黒いオーラを放ち、魔法を放つ。魔王はアリエルを復活記念で初めの奴隷にするのは、あの頃の封印の前の入り口前で憑依契約させて貰ったから。気に入ったからといっても良い。 「ヤバ………い」  赤黒い光に、アリエルの瞳の中に入り込む。そして、過去を思い出す。  ★★★★★★ ───あれは1年前、私があのバカボンの次男と婚約していた時の出来事だった。  私は宮殿の中を歩いていた。煌びやかかつ広くて長い廊下、まるでアレだ………前世の世界にあった、例えるならヨーロッパの宮殿や某魔法学校の眼鏡の少年が活躍する映画にでで来る光景。  行き交う使用人や帝国の重役を担った役人に、頭を下げて挨拶する。 ───そして、廊下を歩いている時、私はとある門前に立ち止まる。 「何ここ?」  そこは鉄格子が掛けられ、煌びやかな廊下とは掛け離れたような漆黒の巨大な扉が出現していた。表札にはkeepoutと記され、立っているだけで額から汗が滴り、前世では繁殖期の熊に遭遇したような感覚だ。まず、繁殖期の熊に遭遇した事もないし、死にますけど………。  さらに、その奥から声。 ───わらわを………わらわ………を。ああ、よい魔力だ。そなたを、わらわに………。  その声はまるで、ほの暗い闇のような。ただ、孤独で禍々しくて恐ろしい。そんな感覚だった。しかし、恐ろしくもあるものの、それは何処か惹かれてしまいそうな。  私はその闇に対し、何故か心地よい感覚が全身に支配される。足先から太もも、そして腹部から胸元に、最期は心を………。 ───ああ、ココチよい………。そなたの魔力、実にココチが………。 「ひっ………」  私は我に返り、その声に恐怖し、その場から逃げる。    この感じた事のない感覚、怖いのに惹かれてしまいそうな感覚に。私は背筋が凍りそうになる。これが、悪魔に心を支配されてしまう感覚なのか………。 「ハァ………ハァ………ハァ………」  部屋の中、私は額から汗を流し、荒々しい息を上下させる。そして、部屋の外を確認する。あの声がまた迫って来ているのではないか………。  しかし、この感覚はなんだろうか。頭の中に映し出されるあの巨大な扉。その奥から聞こえる声、怖いのに惹かれてしまう。それと心の何処かで、またあの声が聞きたい。そんな自分がいる。 「ダメ、あそこにはっ………」  あの扉の奥は、絶対に近づいてはいけない。私はベッドの中、全身から汗を流し。この恐怖を誤魔化すように眠りにつくのである。
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