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サスケ君を寝かしている父の部屋に真っ直ぐ戻らずに一度リビングへと入りテレビをつけるが予想通りに何も映らない。ただ電波の状態が悪く視聴できませんの画面のみだ。
せめて、まともな情報があればと歯がゆい。
手紙にもあったが、母もおそらくデマであると思いながらも藁にも縋る思いで、妹に治療を受けさせるために家を出たのだと思う。
隣町までの足が無いのが辛い。徒歩で辿り着ける保証はない。せめて車でもとは思うが小学六年生で運転できるものだろうか?背丈ではほどほどに足りていると思うが自信はない。そもそもママが乗っていったのだ、車にしてもどこかで調達するしかないだろう。
となれば現実的に徒歩か自転車。持久力にも自信はなく自転車には乗れない。乗れないのだ。乗り方がわからないのだ。怖くて断念してしまったことを今更後悔している。こんなことなら妹の、そこまで思いつきまた動き出す。
行き先は物置に使っている狭い収納部屋。
妹がまだ補助輪を使っていたのが一年ほど前だったはず。それならばまだ捨てずに・・・
ああ、あったあった。
あとはこれを買ってもらってから一度も乗ったことがなく一階元店舗に放置しておいた自分の自転車にセットすればきっと僕でも自転車に乗れるのではないだろうか。
あとは長谷川さんの分だがそれはママのママチャリがある。もし運良くサスケ君が無事に目覚めて動けるとしたら2人乗りで使ってもらえばいい。そう考えながら工具を持ち出しナットを緩め、補助輪をマイ自転車にセッティング。よしうまくつけられた。
ふと父が早くに亡くなってくれてよかったと思ってしまい、一人で首を振りまくる。僕はなんてことを思っているんだ。たしかに父を早くに亡くしたことでママと妹を支えるために様々なことをできるように率先して家事や工作をしてきた。だからこそ諸々の準備だのセッティングだのに戸惑わなくもなった。だがだからと言って父が亡くなって嬉しいはずもない。
頭を振りながら階段に腰掛け、一息つく。
ふぅ。これで足の目処はなんとかついたな。必要物品、装備の準備も終えた。勿論今すぐここを出るつもりはない。ここでママと妹を待つ予定ではある。が転ばぬ先の杖と言う言葉もあるのだ。先回りしておいて損はひとつもない。
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