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階段を上がり、父の部屋へ入る。
二人は小一時間前とほぼ変わらぬ姿勢であった。
「長谷川さん、看病代わろうか?」
「あー、でもやることもないし私の・・・。」
後半はくぐもっていて聞こえなかった。
「ああ、でも熱もとりあえず出てないし傷もとりあえずで処置はしたしね。あとは待つだけだよ?
それに僕たちも体力温存に休まなきゃだけど、どうする?長谷川さんにはママか妹のベッドを使ってもらおうと思ってたんだけど。」
「わ、私はいいです!」
少し口調がきつくなってきた。
まぁ無理もないとは思うが本当に心配なのは彼女の体調ではないのだが、それをはっきりとは言えない。
「・・・それじゃあ代わりばんこに休もう。君にずっと付き添ってもらうのではいざってときに共倒れになってしまうからさ。」
「大丈夫です!」
意外に頑固。頑固というよりも子供を守る母獅子のような強さすら感じる眼差し。
少しため息が漏れる。だけれども譲れない。
「・・・いいかい?
彼が目覚めて、その傷だらけの彼をだ。
誰が守るんだ?
なにかアクシデントがあって、ここに不死人どもが押し寄せたとして、誰が彼を守る?誰が彼を運ぶ?」
少し強めに言い切る。
「それは・・・」
「断っておくが僕は無理だ。」
彼女に被せる。
「僕には家族以外の誰かを守れるような勇気も力も機転もない。ママと妹に再会できるまで。二人が無事に暮らせるようになるまで。僕は絶対に死ぬわけにはいかないんだ。だからいざとなったら君たちを見捨てる可能性すらある。
それが僕だ。
もう一度言う。
誰が、誰を?誰とお互いを守り合うんだ?
そのために今は代わりばんこに休もうと言っている。」
彼女の口が何か言いたげに開き、また閉じて、また開く。
「わかり・・・ました。
で、でも!ちゃんと寝るんで!ここでいいですかっ!?」
・・・ああ、もうダメだな。彼女の瞳はうるみだした。まるで妹の一生に一度のお願いのようにだ。この瞳に兄は弱い。
先程よりもさらに深いため息を吐いて切り替える。
「・・・わかった。それじゃあ布団を二つ持ってくるから。ここで二人で代わりばんこに寝る。それでいいね。」
返事を待たずに部屋を後にする。
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