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ハナは生前の両親がそうしていたように、草履で戸口へ向かって外に声をかけた。
しかし、声は帰ってこない。
もしかしたら、野良犬や野良猫が音を立てていたんだろうか。
蔵に保管してある作物を食い荒らすネズミを駆除するために、猫を買い始めた家が多くある。
その中の一匹がふらふらとやってきた可能性があった。
もう1度外へ声をかけて返事がなければ動物だろう。
そう思ったときだった。
「ハナ。こんな早くにすまないな」
そんな男の声が聞こえてきてハナはまばたきをした。
今のは村の長である田村爺の声じゃなかったか。
田村爺は生まれたときからこの狭霧村を離れたことがない、今年70になる男だった。
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