生贄

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だいたい60前後で寿命をまっとうする人が多いこの村での最年長で、生き神様のように祀られる存在だった。 すなわち、田村爺だと気がついたハナはこの戸を開ける以外に選択肢はなくなったのだ。 「田村爺ですか? 今開けます。少し待ってください」 早口にそう言って閂に手を伸ばす。 こんな時間に老年の田村爺が家を訪れることなんてめったにないことだ。 きっとなにか重大なことが起こったに違いない。 ハナは焦るあまり何度か鍵を開けそこなってしまったが、どうにか閂を開けることができた。 「田村爺、一体どうしたんですか?」 言いながら大きく戸口を開いたハナが見たのは複数の村人たちだった。
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