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村の疫病
「ごほっごほっごほっ」
明治45年、それはとある小さな村での出来事だった。
4畳ほどの狭い板間に引かれた薄い布団の上で、年老いた男が体を曲げてひどく咳き込んだ。
「お父さん、大丈夫?」
隣に座り、布団の中に手を差し入れて男の背中をさすったのは、まだ若い女だった。
女は地味な着物姿で髪の毛はひとつに纏めている。
20にも満たないその女は一生懸命男の看病をしているが、咳は止まらない。
「ハナ。白湯を持ってきた」
声がした方へ女が振り向くと、そこには女と同い年くらいの男が茶碗を持って立っていた。
ハナと呼ばれた女は茶碗を受け取り、父親の体を少し起こしてそれを飲ませた。
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