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けれど草木をかき分けるような音は徐々に樽の方へ近づいてきている用に感じられる。
まさか、野犬?
狼だったらどうしよう!
獣たちが人間の匂いを嗅ぎ分けて近づいてきたのかもしれない。
ハナは両手で自分の口を覆ってできるだけ声を抑えた。
呼吸すら止めてしまいそうになったとき、ザッと樽の前で音がして、止まった。
なにかがすぐ近くにいる!
もしかしたら村人の誰かが戻ってきてくれたのかもしれない。
そんな期待もある中、不安のほうが大きく膨らんでいく。
昔、父親から聞いた話を思い出したのだ。
『いいかハナ。狭霧山には近づくなよ』
それは仕事の休憩中のことだった。
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