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田んぼの畦に座って母親の作ったおにぎりをほおばりながら聞いた話だ。
『狭霧山には怖い鬼がいるんだ。その鬼のせいで山を崩すことができないから、この村はいつでも霧に覆われていて、作物がなかなか育たないんだ』
もしも自分が置き去りにされた場所が狭霧山だったら?
そして、今樽の目の前にいるのが鬼だったら?
考えただけで全身が震えて血の気が引いていく。
父親は昔こうも言っていた。
『あまりに不作が続くとな、それは鬼のせいなんだ。鬼に気を鎮めてもらうために、お供え物をする』
そのお供え物は僅かな作物であったり、野ウサギであったり、幼い子供であったりすると言う。
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