鬼の生贄になったはずが、なぜか溺愛されています。

光鬼

その声はかすれていたけれど、今度はちゃんと届いたようだ。

樽の上部に何かが打ち付けられるような音がした。
樽全体がその衝撃を受けて揺れる。

「ちょっと……もう少し優しくして！」

下手をすれば樽が壊れてしまいそうな勢いだ。
しかし相手は容赦なく樽の蓋に衝撃を与える。

ガンガンッ！　と大きな音がしたかと思うと、木が割れる音が響き、樽の中に多くの光が差し込んだ。
樽の中から頭上を見上げて見るとそこには男が立っているのがわかった。

とても大きな男だけれど、逆光になっていてその顔はよく見えない。
男が片手で樽の蓋を引き剥がし始めた。