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ぼんやりと霞む視界。
背中はゴツゴツとしたものに当たっていて痛い。
さっきまで感じていた囲炉裏の光も、暖かさも、ここには存在しなかった。
「やっと目を覚ましたか」
その声にか細い悲鳴を上げて飛び起きる。
ハナの目の前にいたのは両親ではなく、角の生えた大きな鬼。
ここは家ではなく、深い洞窟の中だった。
鬼は小石を集めて枯れ草や枝を囲み、その中で火を焚いていた。
ゆらゆらと揺れる炎に周囲のゴツゴツとした灰色の岩が照らし出されている。
ハナが横になっていた場所は少し平坦になっているだけで、同じような意思や岩の上だった。
「よく寝ていたな」
鬼はそう言って笑う。
ハナは恐る恐る鬼の様子を確かめた。
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