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最初はなれない山道だったけれど、何度も往復して枝を運ぶことで徐々にハナはこの場所になれ始めていた。
光鬼が優しかったせいもあって、山での生活はそれほど苦痛ではなくなっていた。
洞窟内に枝が小山のようになってきたとき、太陽が傾き始めていた。
山の朝は遅く、夜は早い。
日中の動ける時間はどんどん少なくなっていきそうだ。
ハナは洞窟の入り口に立って大きな木々の隙間に見える月を見つめた。
今頃武雄はどうしているだろうか。
私がいなくなったことにはとっくに気がついているはずだけれど……。
ふとそんなことを考えて、左右に首をふる。
自分はもうあの村の人間じゃないんだから、考えても無駄なことだ。
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