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ここには調味料もなにもないけれど、光鬼が作る料理はどれも絶品でおいしかった。
この山にある食材の味をちゃんと把握している証拠だった。
「今度私に料理を教えてね。少しでも役立たないといけないから」
「どうしてそんな風に考える?」
「それは……」
言いかけて、口を閉じる。
役に立たないと、捨てられるから。
喉元までデカかった言葉を飲み込んで光鬼を見上げた。
光鬼の顔が少し滲んで見えたのは、自分の涙のせいなのだと遅れて気がついた。
光鬼は指先でハナの涙を拭い取ると「変なことは考えなくていい」とつぶやいたのだった。
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