村の疫病

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「大丈夫だよハナ。俺がいるから」 そういう武雄は今にも『家族になろう』と、口から出かかっていた。 だけどふたりはまだ18歳。 当時としては結婚は早くない年齢だったが、両親を失ったばかりのハナにその話をするのははばかられてしまった。 武雄は夜中ハナの手を握りしめていたのだった。 ☆☆☆ ハナの両親の命を、和大奥の村人たちの命を奪っていった風邪はまだ村の中にとどまっていた。 この狭霧村は深い盆地になっているため、細菌も人を抹消して宿主がいなくなってしまうまで出られないのではないか。 そんな噂が立ち始めていた。 「これはきっと狭霧山にいる鬼の仕業だぞ」
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